まだまだ読み込みは足りないかもしれませんが、他の多くの脚本術の本とはかなり毛色の違う、そしてかなり実践的でした。
SAVE THE CAT(セーブザキャット)の法則
SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術
著:ブレイク・スナイダー
訳:菊池淳子
フィルムアート社
チャプター一覧
序文
イントロダクション
Chapter1 どんな映画なの?
Chapter2 同じものだけど…ちがった奴をくれ!
Chapter3 ストーリーの主人公は…。
Chapter4 さあ、分解だ!
Chapter5 完璧なボードを作る
Chapter6 脚本を動かす黄金のルール
Chapter7 この映画のどこがまずいのか?
Chapter8 最後のフェード・イン
用語解説
訳者あとがき
各チャプターの末にある練習問題はかなり実用的
この脚本術に限らず学術書というものはかなりしっかり読み込んで学んだところで、実際すぐに出来るようになるかというとなかなか難しいんじゃないかと思いますが、この本では各チャプターごとのテクニックを完全に身につけ、定着させてくれるかの様に、練習問題が付属していました。
ただ文字を目で追っているより、実際に頭と手を使って学ぶ方が身につくというのはどの勉強においても当たり前といえば当たり前ですが、何であれ実際にあれこれ自分の頭を使って考えること自体に価値があるんじゃないかと思いました。
とはいえ各チャプターごとに学ぶべき内容が明確になっているので、きちんと身につきやすいように工夫されている感じです。
いくつかのチャプター(例えばチャプター4)ではシナリオの構造の分解、分析というシナリオの構成要素を突き詰めて解説もしているので、単純にシナリオの構造を学びたい、学術的な学びの欲求も十分満たされました。
ついでにですが巻末の用語解説も本書のフォロー的なもので短く簡潔にまとめられており、なかなか良いです。
脚本を扱う業界のプロのメソッドが学べる
もうひとつ、この本の特徴的なところとしては、巷によくある脚本術としてのテクニックだけではなく、(映画)業界的な知見に満ちたプロ視点で書かれているので、普通ではまず知ることの出来ない、仕事として脚本を扱う大勢の人間と巨額の動く(映画)業界で日々養われた目線から、本書を読んでいる人だけにこっそり秘密のテクニックを教えてくれているような印象を受けました。
また当然ながらその業界を意識した内容も多々あり、例えば本書の説明の中に
”競売用の脚本を書く脚本家(スペック・スクリーンライター)〔あらかじめ映画会社と契約を結ばずに脚本を執筆する脚本家のこと。できあがった脚本は競売などで売買され、かなりの高額で競り落とされることもある〕”
(P24より引用)
と、このように自分の書いた脚本の良し悪しとその結果がすぐに分かる、シナリオとしての評価が金額で決まるというシビアな世界でしのぎを削った経験による知見は普通ではまず得難く、価値のあるものだと感じました。
ということから本書は脚本家のみならず、映画監督や販売戦略に携わる人もこの本から得られるものが多いんじゃないかと思います。
ただしその反面、結構頻繁に本当に色々な種類の新旧の映画が例として引き合いに出されるので、この本の内容、著者の言わんとしているところ、意図を完全に理解するには、相応の映画に対する知識が(それもかなりの数の映画を見ていないと)必要だと感じました。
総評
テクニックをずらずらと列挙しているだけではなく、各チャプターごとひとつひとつのテクニックをちゃんと身につけられるように最後の練習問題で学べるという、他の多くの脚本術とは違いかなり実践的な本だと思いました。
それでは最後にあくまで個人的にですが本書の象徴的だなと感じた一文を引用します。
”小切手を切る側の人間がどう考えているのかがわかれば、成功に一歩近づけるのは間違いない”
(P10より引用)
やはりこの点でもまさに実践的だなと感じます。
それと各テクニックごとにきちんと章立てになっているので、学びたいもの・テクニックを選んで学べる、要はつまみ食い的に学ぶなんていうことも出来るかと思います。
SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術