ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男
当時映画館で見た映画ですが、あえて見ようと決めてから行った訳ではなく、何かの用事でふらっとしていた時にちょっと時間があいたので何気なく見たという経緯にも関わらず上演中、最後までまったく気が散ることなく集中して見てしまっているほど面白かった映画でした。
この写真はその時買ったパンフレットです。
邦題はウィンストン・チャーチルですが原題は『DARKEST HOUR』なんですね。
既存の戦争映画とは違った視点の作品
戦争映画というと戦場が舞台。メインとなったものかなと思いがちですが、この映画に実際の戦場や戦闘のシーンは一切出てきません。
戦時中イギリスの首相となったチャーチルの視点で、主に国会や自宅、街など。氏の行動範囲が舞台となり話が進んでいきます。
ということから確かにこの映画は戦争を取り扱った戦争映画ではありますが、既存の戦争映画とは一風変わった視点の作品となっていました。
けれど実際に戦争は起きている
ということから、実際の戦場シーンがほとんど無いとなるとどうしても戦争の生々しさとか実感が薄れてしまうのでは。
結局戦場ではない場所から指示を出す話に終始するだけなら言い方を悪くすれば、ある種駒のようにゲーム的な感覚で、見えるものと動かすのは結局のところ地図上矢印と数字だけで実感や悲惨さが感じられないでは、と思いがちなんですが、決してそんなことはありませんでした。
レイトンの兄がダンケルクの撤退中に戦死したことを知り、チャーチルが自身の決断に対する結果の責務とその重さを改めて実感するシーンや、カレーが陥落した時の演出も実際に戦場では血が流れ、何人もの人が死んでいる状況というのがひしひしと実感できます。
というより戦場のシーンがほとんど無いが故にふいに空爆のシーンになったりするとより恐ろしさを感じるような気がしました。
徹底抗戦か和平交渉か
この映画すごく平たく考えるとヨーロッパ全域、そしてイギリスを脅かすナチスという独裁政権の脅威が刻一刻と迫る中、チャーチルの徹底抗戦の政策か。
前首相のチェンバレンやハリファックス伯爵の講和(和平交渉)政策か。二つの大きな選択があり。
その二つのうちの一つをどの様な考え経緯で選び決断し、結果どんなことになったか、というものだと理解しました。
といいますか結果どうなったかも確かに重要ですが、この映画の主題は結果云々というよりかは、どちらを選ぶことが自分達、そして国民にとって正しい選択なのか。その懊悩となぜその決断に至ったのかの経緯が一番重要であり、この映画の主題だったのではないかと思いました。
イギリスという長い歴史を持つ国の存亡だけでなく、ひいては世界の運命すら左右することになりかねないこの事態に映画内のチャーチルの台詞でもあるように交渉に入ることが自分の責務なのか、とひたすら懊悩し続けます。
見どころはやはりチャーチルの名演説
何と言ってもこの映画の見どころは後半の地下鉄で国民ひとりひとりと直接言葉を交わし、問いかけその熱意を感じとり自分の考えは間違っていなかったと確信するシーンと。ラストシーンのチャーチルの演説が行われる圧巻の国会のシーンかと思います。
それまで自分の考えに自身を失いつつあり気弱になっていたチャーチルが、地下鉄で確かに民意という気持ちを背負った時の覚悟の顔つきと。
その吹っ切れたチャーチルが国会で一言を発する度に徐々に大きくなっていく歓声と沸き上がっていく様はまさに見どころと言っていいものかと思います。
しかしこの映画を見終わった時になぜチャーチルが名演説家と言われるのか個人的に考えましたが、あくまでこの映画の中だけに限定するのならば、チャーチルの演説の力は技術とかそんな小手先のテクニックとかではなく。
国王や国民ひとりひとりの声に含まれる彼らの発する強い気持ちに共感し、それを高い純度で自分の言葉に載せられる力。
言葉の背景にそういった気持ちを載せ、なんというか聞くものに本当に大切なものを思い起こしてくれるというか、気持ちを鼓舞し感情を喚起させる。
そういったハートの部分での揺さぶりに長けた人物だったのではないかな、とこの映画を見て感じました。
とにかく本当に時間を忘れさせてくれる良い映画でした。
さいごに ある種Hearts of Iron的では
チャーチルが首相に就任したのが第二次世界大戦の真っ只中の1940年ですが、この『Hearts of Iron IV』(通称hoi4)もまさにその時代が舞台のゲームとなっています。
これはチュートリアルの画像ですが1936年となっており中央にダンケルクも写っています。
まさにこの映画のように一国の首相となったような気分で遊べるゲームですが、パラドゲーあるあるの作り込みがしっかりしている分、覚えることが多いのでなかなかに歯ごたえがあります。
最近はすっかり触っていませんでしたが、この映画を見たら久しぶりにやろうかなと思いました。