HIGH SCORE The First Computer Graphics Game ハイスコア ゲーム黄金時代
冒頭にもありますがそれまで受け身一辺倒だったテレビを、主体性を持って参加できる双方向にした画期的な発明とも言えるゲームの歴史を、当時の映像とゲーム界のレジェンド達による解説と共にこの一大ムーブメントを振り返るという、ゲーム好きにはもちろん、あまりゲームはやらないけれどこのゲームというムーブメントがどうしてここまで盛り上がったのか、その発展の経緯に興味ある方には是非おすすめの非常に面白く質の高いドキュメンタリー番組でした。
第1話 ビデオゲーム革命
概要
スペースインベーダーとパックマンが巻き起こしたアーケードブーム。
家庭用ゲーム機市場を独占していたアタリが、史上最悪の失敗作を世に送り出す。
感想
まずはスペースインベーダーを作った西角友宏氏が出ておられます。この当時もの凄いブームとなったこのゲームをどのような発想で生み出したのかを解説してくれています。
そういえばドラマ『全裸監督』 でも主人公がこのゲームで遊んでいる様子がありましたが、まさにブームとなったのが、ドラマの舞台となった1980年代だったようです。
次にパックマンの生みの親、岩谷徹氏も同じくどのように生み出したのかを解説してくれています。パックマンがアメリカでアニメ化やCMで使われるほど人気で、特に女性にうけていたとはまったく知りませんでしたので、目から鱗でした。
次は史上初のカセット式のゲーム機、チャンネルFの開発者の話です。
一つのハードでいくつものゲームが遊べるシステムは今では当たり前に思えますが、当時しては革命とも言えるカートリッジ式のゲーム機を1976年にすでに開発し商品化していた人物がいたことは驚きでした。
・ATARI
このチャンネルFを歴史の影へと追いやったのがかの有名なアタリです。
アタリについてはちょっと前に同じくNetflixに『アタリ ゲームオーバー』が来ており(今はもう日本では見られませんが)それを見ていたので、アタリが集落へと向かうくだりは大体の内容を把握していましたが、それとはまた違った視点からの内容だったので面白く興味深かったです。
アタリと言えば悪い意味で伝説的に有名なゲーム『E.T.』を思い浮かべる方も多いかと思いますが、次のインタビューはこのE.T.を作ったハワード氏でした。
しかしながらゲームオーバーの内容を振り返ると、氏は優秀なクリエーターでそれまでに数々ヒット作を生み出しており、E.T.を作った経緯も短すぎる納期と当時のハード性能の表現の幅の狭さを考えると、一人だけの責任にするというのはちょっと不憫に思えます。
よく言われるのがアタリショックを生み出した原因が、ゲームの開発経験のない企業がこぞってまさに当時大金のうなるゲーム市場に参入しまくった結果、粗製乱造し質の悪いものが巷に大量に出回った結果ブームが過ぎ去った、というのが通説とのことですが、実はその前にすでにゲーム市場は崩壊しつつあり、他にも様々な要因が絡んだ結果崩壊に繋がった説もあるそうです。
製作者本人も語っていましたが、そんな時にちょうどよく目立つ顔として叩く為のやり玉にあげられたのが、E.T.というゲームだったのかもしれません。
『ATARI GAME OVER』では都市伝説とも思われていたその不良在庫となった大量のE.T.のソフトが埋められたというニューメキシコ州のアラモゴードで実際に発掘した 時の映像が入っていますが、当時ニュースにも載ったそうで、これは発掘した結果を含め一見の価値があるかと思います。
第2話 アメリカンドリーム
概要
花札の製造や販売をしていた任天堂が市場に参入。
アーケード版ドンキーコングを大ヒットさせ、後に発売したNESで家庭用ゲーム機市場を席捲する。
感想
第2話は日本が世界に誇るゲーム会社、任天堂の話です。
まずは任天堂で20年間サウンドエンジニア(効果音の制作)として務めていた田中宏和氏の話から始まります。
そして次の話題がかなり興味深かったのですが、当時任天堂アメリカには自社内にゲームの攻略法を教えてくれたり相談できる部署があり専門のカウンセラーがいることでした。
つまり早くクリアすれば、すぐまた次のゲームを買ってもらえるようになるというセールス戦略的な理由ですが、ネットもゲーム攻略雑誌も無い当時のアメリカだからこそ成り立ったともいえる今から考えるとても面白いことしていたようです。
知っている人には当たり前の余談ですが、アメリカだとファミコンという名称ではなくNES、Nintendo Entertainment System(ニンテンドーエンターテインメントシステム)という名称で、カセットもファミコンの様に上から差すのではなく、ビデオカセットのように手前の蓋を開けてからカセットを入れ込み、トレイの様なものに載せて押し込んで入れるタイプだったのを知った時は驚きでした。
次に今まさに盛り上がりつつあるeスポーツの先駆けとも言える、当時始まったばかりのゲーム大会の様子とプレイヤーへのインタビューを挟みつつ、再び最初のゲームカウンセラーの話に戻り、そして任天堂の顔とも言える伝説的なゲームデザイナー、宮本茂氏の話に移っていきます。
・有名な訴訟の話も
ここで映画会社ユニバーサルから訴えられたドンキーコングの訴訟問題による任天堂の危機を救ったかの有名な弁護士ジョン・カービィ氏が登場し、この訴訟の経緯を分かり易く端的にしかも本人が解説してくれていますので、一見の価値ありです。
その後氏の功績に敬意を表し任天堂が『星のカービィ』に氏の名前をつけたことはあまりにも有名な話かもしれません。
そして最後は任天堂アメリカがアメリカで攻略雑誌を作る際に日本のゲーム雑誌を参考にした話と、それを北米の読者が満足するようにローカライズするのにはかなり苦労した様子で締めくくられています。
第3話 ロールプレイング
概要
ボードゲームのダンジョンズ&ドラゴンズから着想を得て生み出された、冒険型ロールプレイングゲーム。
これまでにない複雑な選択式ゲームが誕生する。
感想
ここでいよいよ、よりゲーム内に、あるいはストーリーに主体性を持って積極的にプレイヤーが参加できるRPGことロールプレイングゲームの誕生の経緯が語られます。
読んで字のごとく、ロール(役割)を演じプレイするロールプレイングは、プレイヤーが自分のキャラクターを作成できるということもあり、それまでのただ敵を倒すだけとか、アクションを楽しむだけの、物語としての背景や奥行きがなく、起承転結が一切なかった当時としてはまさに画期的だったようです。
こうして生まれたRPGによってかつてない没入感と体験が得られるようになったのは、まさに番組内でも語られていた通り、ゲームを新しい次元へと引き上げた物凄く大きな功績だったと言えるのではないでしょうか。
当時はまだワープロ、計算やデータベース作成などほぼ業務用としか使われていなかったコンピューターをゲーム機として使えないかの試行錯誤、テキストベースでお話が進む選択式のテキストアドベンチャーからの進化の様子が当時の製作者によって解説されています。
・ウルティマの生みの親の解説
そして次はかの有名なRPG『ウルティマ』を生み出したリチャード・ギャリオット氏が登場し、やはりというかRPGとは非情に関係が深い、切っても切り離せない源流とも言える、ダンジョンズ&ドラゴンズを遊びなからの解説が始まります。
ダンジョンズ&ドラゴンズといえばD&Dともよく呼ばれている有名なテーブルトークRPGですが多分ドラマ、ストレンジャーシングスで主人公の少年達が興じていたことで知っている方も多いのではないでしょうか。
ここでいよいよAppleⅡが登場となり、よりゲームのクオリティの向上した様子が解説されていますが、当時高校生だった氏が『アカラべス』というRPGをたったの6週間で作り、しかも印税として15万ドルも稼いだというのは驚きです。
ウルティマといえばオンラインになったりと近年まで続編が作られ、とても広い年代の人々を楽しませ続け、更に様々なRPG作品の原型や後続を作ったことを考えると、ものすごく大きな功績と言えるのではないでしょうか。
・ファイナルファンタジーの天野喜孝氏が登場
中盤ではその次のブレイクスルーとして日本のゲームメーカーに話題が移り、かの有名なファイナルファンタジーのキャラクターデザイナーである画家の天野喜孝氏が当時の話を振り返りながらの解説が入ります。
引用になりますが、『ウルティマ』に発想得たRPGを作りたいものの、それを際立たせる芸術的な表現を必要としていた為、天野氏に白羽の矢がたったそうです。
当時はハードの技術的な問題で、キャラクターなどの表現がかなり制限され元の絵から大分ディフォルメされていましたが、逆にそのお蔭でプレイヤーは想像力を豊かに働かせていたという解説のくだりは、まさにそうだなあとものすごく納得しました。
その後ハード性能の進化と共にグラフィックが向上したことにより、より深い没入感が得られるようになり、表現としては今の方がずっと恵まれた環境であることは言うまでもないことですが、その進化の軌跡をリアルタイムで追えたことは他には代えがたいかけがえのない体験かと思います。
・まだまだ進化するRPG
後半では『ウルティマ』の製作者リチャード・ギャリオット氏は、更なるRPGの進化として(というか問題に対するソリューションとして)プレイヤーに良心と道徳心を持たせる為、アバターという概念を取り入れたことを解説してくれています。
これはまさに今のスカイリムや、fall outのカルマシステムとして受け継がれているものですね。
そして氏の
「ウルティマⅣを意味のあるものにしようとしたのです。楽しく時間をつぶすだけの場所ではなく、個々のプレイヤーにとって大切なものにするのかです」
という実に深い言葉で締めくくられています。
第4話から6話の感想は、第二回の記事に続きます。