HIGH SCORE The First Computer Graphics Game ハイスコア ゲーム黄金時代
第4話 ゲーム機戦争
概要
ゲーム機メガドライブを発売し、新マスコットのソニックを採用したセガ。
エレクトロニック・アーツはアメフトの名解説者ジョン・マッデンを起用する。
感想
待ってました! と、思わず言ってしまうセガがいよいよ登場です。
個人的にあの音速のとにかくクールなハリネズミこと、ソニック・ザ・ヘッジホッグと。
ゲームの完成度はもとより、世界感からエンディングまでを含め、凄まじいまでの感動をもたらしてくれたNIGHTSという超名作を生み出したセガには、特別な思い入れがあるというか、数々の体感アーケードゲーム。
バーチャファイターなど、業界だけでなく世間にもパラダイムシフトを起こすまでの金字塔ゲームを生み出すそのポテンシャルは計り知れないものがあると思っています。
特に故・大川会長のゲームに対する愛と姿勢は、氏の残したいくつもの功績の中でも無視できないものではないかと考えます。
とはいえ実は任天堂のハードに押され日本ではそこまで振るわなかったメガドライブですが、北米や欧州。特に南米ではかなり長い間親しまれていたハードでした。
他のハードに比べメガドライブに海外製のゲームの移植が多かったのは、この辺の理由があるのではないかと推察します。
セガの戦略とソニックのキャラデザ秘話
少し個人的な語りが長くなってしまいましたが、第4話の内容に戻ります。
当時NESが8ビットだったのに対し、ジェネシス(メガドライブ)は16ビットの性能がありましたがヒット作が無く。アメリカでは98%のシェアを任天堂が占めていました。
そこでセガはマテル社(おもちゃメーカー)を退職したトム・カリンスキー氏に経営を依頼しますが、100万台売れというかなり無茶な要求をつきつけます。
カリンスキー氏はそこで5項目からなる戦略を立てる訳ですがその2番目であるマリオを倒す、と。ティーンにクール(かっこいい)と思わせる、を実現する為。セガの安原広和氏とキャラクターデザイナーの大島直人氏が、後のセガの象徴とも言えるキャラクタ。ソニック・ザ・ヘッジホッグを生み出します。
大島氏がニューヨークのセントラルパークでどのキャラが良いかアンケートを取ったことなど、その制作秘話はかなり興味深いものでした。
余談ですが、貴重なソニックの仕様書がちょこちょこ写っていますが、よりディフォルメされているソニックになんだか見覚えがあるなあと思ったら、ソニックの説明書にも載っている絵だったことを思い出しました。
更に余談ですが、このソニックのBGMをかの有名なドリカムことDREAMS COME TRUEのベース、中村正人氏が手掛けていることは有名な話ですが、これを知った当時はかなり驚いたものです。
中でもグリーンヒルゾーンとスターライトゾーンの曲が好きで、この曲を聴く為だけに遊んでいたりもしました。
多分セガ製のUFOキャッチャーのBGMで聞いたことがある方も多いんじゃないかと思います。
これはスターライトゾーンの参考動画とBGMですが、まさか楽器なしの全部口(アカペラ)で演奏というめちゃ面白い動画をYoutubeで見つけた時は感心しながらも笑ってしまうという複雑な心境になりました。
エレクトロニック・アーツの登場
といった北米での戦略に始まり、次に1994年のセガワールドチャンピオンシップに出場した有名プレイヤー、クリス氏の話を挟み、3つ目の戦略であるもっとスポーツゲームを発売する、の話題へと移りエレクトロニック・アーツが登場します。
エレクトロニック・アーツといえばバトルフィールドだけでなく今尚続く老舗スポーツゲームメーカーのイメージがありましたが、その発祥の話はかなり興味深い内容でした。
同社はリアルなフットボールのゲームを作る為、フットボールの有名解説者をアドバイザーとして起用しましたが、この大胆な戦略が功を奏し、セガの三つ目の戦略を成功させます。
このゲームが当時まだまだ稚拙だったスポーツゲームに革命を起こす訳ですが、まさか解説者をゲームデザインに起用するというアイデアは驚きますね。
日本でも個性的な解説者がいて、お茶の間を楽しませていたかと思いますが、そういえばと有名選手や解説者の名が入る(実際に監修していたりと)流れを作ったのが、このきっかけだったのかもしれません。
そして最後になんだかオチ的な扱いで5つ目の戦略の解説で締める訳ですが、これは実際に見てもらった方がいいかと思います。
「セガ!」と(多分何の脈絡もなく)連呼しまくるCMの数々は正直腹抱えるくらい馬鹿馬鹿しくて勢いがあって面白かったです。
第5話 格闘ゲームの新時代
概要
ストリートファイターとモータルコンバットの登場によって確立した対戦型格闘ゲームのジャンル。
だが、その過激な暴力描写が大きな波紋を呼ぶことに。
感想
今回はアクションや格闘だけでなく、今までに無い新感覚のゲームを生み出すことに定評のあるゲームメーカーの雄。カプコンが登場します。
最初はまずゲームデザイナー西谷亮氏が、日本だけでなく世界的に大ヒットした格闘ゲーム。ストリートファイターシリーズがどのようにして生まれたのかを解説してくれます。
また日本にゲームで対戦する楽しさ、という文化を根付かせた功労も大きいゲームだと言われています。
いきなり余談ですが、Steamで販売されている『Street Fighter 30th Anniversary Collection』というゲームがありますが、歴代のストリートファイターシリーズが多数収録されているだけでなく設定資料など、ファンなら大喜びの充実の内容なので、かなりおすすめですよ。
ここでまたこの先ほど紹介したSmooth McGroove氏の登場ですがアメリカでは、ガイルがとても人気だそうでその理由をどこかで見たことがあって改めて調べてみましたが、非常に面白いものでした。
興味がある方は関連の記事がネットにあったので、是非調べてみることをおすすめします。
次にイラストレーター安田朗氏が登場し、人気キャラ春麗の誕生制作話を解説してくれてます。
当時まだゲーム内ではサブ的な扱いだった女性キャラクタを、しっかりと確立したのはこの春麗というキャラが初ではないかと、西谷氏は解説していますがまさにその通りかもと見ながら何度もうなずいていました。
カプコンイラストレーションズというイラスト作品集を熟読していた自分にとって安田氏はよく知っている人物でした。
個性的で魅力的で躍動的なキャラクタを描くイラストレーターの一人です。
次はドット絵のストⅡとは対照的に、俳優を使い実写の画像を採用したモータルコンバットのグラフィックアーティスト、ジョン・トバイアス氏の話に移ります。
モータルコンバットの制作においてブルース・リーのカンフー映画やストリートファイターに影響されたことなどを語っています。
そして対戦文化を根付かせたストⅡブームが更にゲーム大会へと発展し、更に今何かと耳にすることの多くなったeスポーツの流れとなった解説を挟みつつ、再びモータルコンバットの話に戻ります。
過激な暴力描写の問題
モータルコンバットはフェイタリティというKOした相手を残虐的な方法で止めをさせるシステムがありますが、これに象徴されるように、ブームという華々しい表の面と逆の影の部分。
格闘という要素に付随する暴力的な表現、また格闘に限らず暴力的な表現に対する規制もまた、ブームという目立った形になったがゆえに次第に厳しくなっていく状況を解説してくれています。
その代表としてワシントンでの公聴会にまで取り上げられた『ナイト・トラップ』というゲームが挙げらていますが、様々な厳しい規制や条件の中で制作した結果、ゲームとして割と酷いものになってしまうだけでなく、その性的・暴力的な表現に政治家までが立ち上がってしまうという、製作者たちにとってはなんとも悪夢的な話だと思いました。
しかしこのゲームの製作者のひとりが有名海外ドラマ『24』のビジュアルエフェクトのスーパーバイザーとして参加していたとは驚きでした。
規制がもたらした、皮肉な結果
個人的にはモータルコンバットはあまりやったことがなかったのですが、最近のよりリアルになったグラフィックのフェイタリティはちょっと直視できないくらい過激なものになっているように感じました。
同ゲームの製作者としては、こうした表現はあくまで大人向けであり、現実ではなくあくまで空想に過ぎない、という論調でしたがこのようなゲームを子供が熱心にプレイしていることに懸念を抱いた親やテレビなどのメディアで有識者などが問題を定義しますが、こうして取り上げられたことによって宣伝効果となり、規制とは逆により大きくヒットしてしまった皮肉な結果になってしまった、ということを解説しています。
同ネットフリックスのドキュメンタリー『ヒップホップエボリューション』でも似た様な現象を解説しており、当時N.W.Aに代表されるギャングスタラップを若者がこぞって聞いていたことに懸念を覚えた保護者などが政治家を巻き込み、規制を作る流れになったことを思い出しました。
これがよく洋楽のCDに貼ってあるペアレンタル・アドヴァイザリーのラベルシールですが、これが逆に宣伝効果となってしまった話に似ているなと思いました。
ペアレンタル・アドヴァイザリー(Parental Advisory)とは、アメリカ合衆国において、未成年者にふさわしくないと認定された音楽作品に全米レコード協会(RIAA)が添付する勧告である。wikipediaペアレンタルアドヴァイザリーより引用
第6話 レベルアップ
概要
任天堂が初の3Dゲーム、スターフォックスを開発。
Wolfenstein 3Dの登場で一人称視点のゲームが広まるなか、ネットワークを利用したDoomが誕生する。
感想
序盤はかの有名なFPS(一人称視点シューティング)ゲーム『Doom』のデザイナーであるジョン・ロメロ氏が登場し、その制作の過程を詳しく解説してくれます。
ネットワークによるFPSゲーム初のオンライン対戦(マルチプレイ)が出来るこのかつてない画期的なゲームが、ゲームという娯楽をまた新たな次元に引き上げたことをナレーションが語っています。
ここで驚きなのが、当時からゲームのサブスクリプション(定期購読)があったことで、このゲームの製作者は当時毎月ゲームの入ったパソコン用ディスクを届けるサービスをしていたとのことです。
この流れはもしかしたら現在のハンブルマンスリーなどのサービスに代表されるゲームのサブスクの原型だったのではないかと思います。
しかしこのDoomの製作者であるロメロ氏はメタル音楽好きとの話が動画内でありましたが、まさに作っているゲームの世界感にもそのファッション髪型にもメタル的な要素が色濃く出ているなあと思いました。
いよいよ3Dゲームの登場
次はこれまたかつてない画期的な要素。3Dポリゴンを使ったゲームの話に移ります。
3Dは2Dより深い没入感の得られる表現として、まさに画期的な発明だった訳ですがその誕生の経緯についての解説です。
ここで取り上げられるのが任天堂が制作したかの有名なコンソール初の3Dシューティングゲーム『スターフォックス』ですが、当時このゲームのグラフィック表現には驚いた方も多いのではないかと思います。
ここで第二話で登場した宮本氏が再び登場し、この3Dゲームが遊べる新たなハード。ご存知スーパーファミコンの登場となります。
しかしまあこのスターフォックスが生まれた経緯や宮本氏の逸話が実に面白いことこの上ないのですが、あまり詳細まで書くとネタバレになってせっかくこの番組を見る意味がなくなってしまいそうなので、ぜひ本編で実際の開発者の話を聞きながら見るのが一番かと思います。
しかしスターフォックスが、宮本氏が初詣に訪れた京都の伏見稲荷大社(当時任天堂が近所にあったとのこと)の鳥居にインスピレーションを受けて生まれたものだとは、驚きの事実でした。
伏見稲荷大社がどんな感じなのかは、こちらの記事からどうぞ。
Steamで見つけたフリーで遊べる『Explore Fushimi Inari』でリアルな伏見稲荷大社を散策してみよう
Doomの製作者の功績とその土台
そしてまた話はDoomに戻り、当時モデムによるダイアルアップでのインターネット接続だった時代にメインだったRTS(リアルタイムストラテジー)ゲームや、遅くシンプルなネットワークを介したゲームしかなかった界隈に革命をもたらしたことを解説してくれます。
ここでその当時遊ばれていたDoomのプレイ映像が出ますが、グラフィックのクオリティこそ違えど、その画面はまさに今見るFPSとまったく同じもので、ここでその原型が生まれたのだと感慨深いものがあります。
またDoomを三分割にして、最初の一つ目を無料サンプルとして配布した戦略的な話も興味深いですが、その後の今尚PCゲームに受け継がれるMOD文化についての話はかなり面白かったです。
※MODとは、簡単に説明するとゲーム内のファイルを書き換えたり追加したりすることによって既存のキャラクタや効果音。画像などを別の好きなものに差し替えられたり、システムそのものを変えたりできるシステムです。
こうしてゲームの情報を全て公開し配布するという手法で、より長くプレイヤーに楽しんでもらえる土壌を構築した功績も大きいのではないかと思います。
そしてこのロメロ氏の例に例えられるように、何十億ドルという一大娯楽産業へと成長を遂げたゲーム業界の過程は、歴史の中でいきなりポンと生れた訳ではなく。過去のゲームという土台、基礎の上に作られていった、という旨のナレーションが入り。
番組の最後はゲームの生みの親、ノーラン・ブッシュネル氏をはじめとした今まで出演した数々のレジェンド達の言葉で締めくくられています。
さいごに
つい熱が入って文字数がかさんでしまいましたが、それだけにこのドキュメンタリーの質が高かったというのと、取り上げた題材が個人的にとても興味深いものだったということに他なりません。
ゲーム好きにはもちろん、ゲームはあまりやらないけれどこれが及ぼした影響や功績が知りたい方には是非おすすめの番組です。