映画『ファウンダー』予告編
簡単な序盤のあらすじ
1954年。主人公の50過ぎのさえないミルクシェイク用ミキサーの営業マン、レイ・クロックにある日1店舗で6台という大量の注文が入る。
さっそくその注文を受けたカリフォルニアにあるという店にいってみると、そこは大量の客が押し寄せるハンバーガー店だった。
そこでレイはそこで経営者である気の良い兄のマックと、几帳面で数字にうるさい弟のディックと出会う。そして驚くほど速く、かつ高効率で画期的な提供システムに驚愕する。
序盤のワクワク感が凄い
序盤からもうこれ絶対面白くなりそうなやつだ、と思わず思わせる雰囲気が冒頭からぷんぷんしています。
というのもメタ的な話ですが、その後マクドナルドがどうなったかを知っている観客からすれば、結果どの道成功することを知っているので、もう成功が約束されたことは間違いと予想されるからこそ、不遇な境遇がより面白く感じられるというか、行く先々の営業先の店舗に冷たくあしらわれる主人公のレイの不遇っぷりもまるで悲惨さがなく、安心して見ていられます(結構こういうことってあるんじゃないでしょうか?)
とにかく序盤のワクワク感は申し分ないくらいで、これからどうなるんだろうという期待を持たせてくれます。
しかし中盤から徐々に雲行きがあやしくなる
しかしながらことはそう簡単には進まず、兄弟と細かい契約を交わすにより、より広いフランチャイズ化を進めることに出来るようになったレイと徐々に考え方の違いにより、意見がぶつかるようになっていきます。
スピーディーでより大きく広い展開を望むレイと、商業主義よりも信念に重きを置き手の届く範囲。きちんと管理できる範囲で丁寧に品質管理をしたい兄弟との間に溝が生まれ、次第に考え方でぶつかり始めたあたりから、段々と歯車が狂いだしていきます。
ここで個人的に印象的だったのが、出資者達の店が許可なく勝手にハンバーガーにレタスを入れたりチキンを売ったり、ハンバーガー自体も焼き過ぎてたりと、品質管理が出来ていないことを注意したシーンでした。
つまりレイはこの段階ではフランチャイズ展開としての最低限のラインは守っており、まったく何も考えずに展開しようとして訳ではないことが分かりました。
またこの辺りからレイの奥さんがレイの仕事に対して非協力的な面がより目立ってきています。
これが後に、レイの教訓となりフランチャイズ化した店舗を任す時は、必ず夫婦で店の仕事を協力できる人間をきちんと選んでいた伏線となっているようです。
こうして更に各州に店舗をどんどんと増やしていきますが、ハンバーガーの販売だけでは儲けが少なく資金難に陥ります。
その解決のため銀行で出会った人物からフランチャイズはシステムやノウハウの提供という仕事ではなく、土地の貸し出しということも出来る不動産業であるということを入れ知恵されます。
ここでレイはかねてよりの願望だった帝国を築くため兄弟との契約を一方的に破棄を宣告し、同時に奥さんとも離婚します。
ファウンダー(創業者)という皮肉なタイトル
その後は契約の破棄など辛い展開が続き、いよいよ屋号まで乗っ取りエンディングを迎えますが、なんとも後味が悪い終わり方です。
レイはコンセプトを作って多くの地域に展開させた功績はあれども、元のシステムは一切作っていない創業者でも何でもない、いわゆる乗っ取りだしそのこと自体もまったくもって考慮もしない暴走気味なところが印象に残った感じでした。
つまり本当の創業者に対して一から作り上げた功績、仲間として迎え入れてくれた温情に対し十分な敬意を払ったとはとても言えないし尊重もしていない。
時間はかかるかもしれないけれどこんなにもこじれることなく上手く兄弟を説得なり、丸め込むというか双方に得するやり方もあったのでは、と思いました。
結果周りを顧みず己の目標に真っ直ぐにやり過ぎたせいかなんとも最後は実に後味の悪い終わり方というか、創業者の兄弟をはじめ、自分の奥さんや再婚相手の元旦那と色々な人の心を踏みにじったことになり、成功者と呼ぶには、その足元には多くの人の無念が横たわっている感じがするしで、なんとも言えない後味の悪い終わりに感じたのだと思います。
しかしながら、離婚については非情にも思えるけれど、同じ視点(ビジョン)を共有できなかったことをの反省を生かし、その後の夫婦で協力できる人物を見定めているという、実体験から学んだ経験則をきちんと活かしている、経営者としての資質が十分にあったことがうかがえます。
エンディングがなんだか物悲しい
マクドナルドといえば生まれたアメリカだけでなく、世界中で食べられる超有名チェーンですが、多くの人を喜ばした分。あるいは色々な面で多くの人を豊かにした分だけ、それに見合ったお金が入るという、ある意味ビジネスの基本原理からすれば悪いことだけ、とも言い切れないかなと思いました。
あの兄弟の考え方や信念だと決して世界に展開する程の規模まで大きくはならなかったことを考えると、レイの功績はまったくのゼロではないので、簡単にレイのやり方を非難だけして切り捨てるだけの映画、というのもちょっと違うような気がしてしまうのが不思議な感覚です。
しかしながら、ラストの一言や合間合間にレイの成功への執念。憑りつかれているといっていいほど成功に対する執着が見られることもあまり良い人物、そして終わり方に見えなかった一面もあるかと思いました。
成功によって得られるものではなく、成功そのものへの執着、と思わせる演出が多々あり、特にクロックという自分の名前では成功することない。
だがマクドナルドという名前。実にアメリカらしい、アメリカを体現した響きは必ず成功する、という確信をのぞかせるシーンは印象的でした。
この店はちっぽけな範囲でおさまるものではなく、もっと大きな展開の可能性を秘めたものになるという信念。
その信念を少しも疑うことなく純粋に突き進んだだけのシンプルな話だったのかもしれません。
けれど、考えさせられる
まったくの余談ですが最近よくubereatsの配達しているところを見ますが、あの中にはマックが入っていたりすることも考えると、こんな遠くの地でも食べられるようになっているというのはやはり大きなことを成し遂げたんだなあ、と思ったりもします。
うだつのあがらない50過ぎの中年営業マンの痛快な逆転サクセスストーリーを期待すると、大いに肩透かしをくうし、これをビジネスの手本ととるにもやり方がちょっとえぐ過ぎるし、もちろん商品に魅力あっての話ですがなんだかんだいって結局やったことは不動産業だし、なんというかこれがたった一つの最善の方法だとは言いきりたくない気持ちがあります。
かといってまったく参考にならないか、と言えばそうとも言い切れない部分がいくつもあるのもこの映画の多面的な面白さになっていると感じました。
まとめの結論:後味は悪いけど十分見ごたえあり
ということで個人的な結論としては幾分後味が悪すぎて手放しですすめられない気持ちはありますが、映画としては申し分なく面白かったし、最後までだれずに集中して見られたのは間違いないので、前述のもろもろの要素を総合すると、十分見る価値のある、見ごたえのある映画だという評価は揺るがないです。
おまけですがこれは以前映画を見に行った時の適当ブログに貼った写真です。
その時のブログを見てみると、ファーゴ(ドラマ)のシーズン2のルー役(若い時)の方がほとんどちょい役ですが出てました(写真中央)、とか書いていました。
なんだか随分前に書いたものを見返すのは恥かしい限りです。
そういえば、とこのブログでもsteamゲームカテゴリのアナザーブリックインザモールの紹介記事が中々に読まれており嬉しい限りですが、このモール経営ゲームではハンバーガー店も作ることが出来て、ちょっとした経営者気分も味わえて面白かったことを思い出します。
Steam旧正月セールおすすめゲーム『Another Brick in the Mall』(アナザーブリック インザモール)